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ピッケルの正しい使い方と選び方がわかるガイド|持ち方から滑落停止まで

雪山や冬山での行動に欠かせないピッケルですが、正しい使い方を知らないと危険が増します。ここでは短時間で基本を身につけるためのポイントを、実際の場面を想定しながらわかりやすくまとめました。持ち方や刺し方、滑落時の対処まで押さえて、安全に使いこなせるようにしましょう。

目次

ピッケルの使い方を短時間で覚えるコツ

ピッケルの扱いはシンプルな動作の組み合わせで成り立っています。まずは持ち方と向きの判断、そして緊急時の一連の動きを反復して体で覚えることが近道です。練習は落ち着いた場所で、実際の雪面や柔らかい斜面を使って段階的に行いましょう。

最初の練習は静止した姿勢での握り方確認から始めます。ピックやシャフトを目で確認し、どの面が雪面に当たるかを意識してください。次に歩行中の持ち替えや、左右切り替えを小さな動作で繰り返します。短い時間でも毎回同じ動作をすると反射的にできるようになります。

次は斜面に立って刺す練習です。刺す深さは姿勢と斜度で変わるため、数回試して適切な角度と力加減を体感してください。最後に滑落停止の動作をゆっくり確認します。動作を段階に分けて覚えることで、短時間でも安全な操作が身につきます。

ピッケルが使われる主な場面

ピッケルは歩行の補助や斜面でのバランス取り、雪壁や氷の登下降、そして滑落の停止など多用途で使われます。行程や雪質によって使い方が変わるため、場面ごとに動きを整理しておくと安心です。

平坦な雪面や緩やかな登りでは、補助として軽く突くように使います。強く刺す必要はなく、リズムを取るための支点になります。急な登りやトラバースでは安定を得るためにしっかりと差し込んで支持点を作ります。

氷や硬い雪面ではピックでしっかり食い込ませる技術が必要です。下降やクライミングではピックの角度や向きを調整して効率よく刺し、シャフトを体に近づけて負荷を分散させます。滑落時は即座にピックを刺して身体を支える動作が求められますので、普段からその一連の動きを体に覚えさせておきましょう。

まず覚える持ち方

基本の持ち方はシャフトを下から握り、ピックが後ろを向く状態です。利き手で握ったら、もう一方の手は必要に応じてシャフト近くに添えると安定します。歩行時は軽く持ち、急な場面ではしっかり握り直します。

握る位置は用途で変わります。歩行や補助のときはシャフトの中央寄りを持ち、踏ん張りや急停止が必要なときは下端近くを握るとコントロールしやすくなります。手首は自然に曲げ、力を入れ過ぎないようにすることが長時間の行動では重要です。

グローブ越しでも確実に握れるよう、滑りにくいグリップやストラップの使い方も確認しておきましょう。持ち方が安定していると、刺す角度や抜き方も楽になり、全体の操作がスムーズになります。

ピックの向きを切り替えるタイミング

ピックの向きは歩行か支点かで変わります。通常歩行中はピックを後ろ向きにして携行し、斜度が増したり支点を作る必要が出たら前向きに切り替えます。切り替えは一呼吸で行えるよう練習しておくとよいです。

トラバースや斜面での切り替えは、体重移動と同時に行うと安定します。ピックを前向きにする際は手を低くしてシャフトを体に近づけ、振り上げないように注意します。逆に前向きから後ろ向きに戻すときは周囲に人がいないか確認し、誤って当てないよう配慮してください。

切替の際に無理に力を入れず、自然なリズムで動かすことがポイントです。何度も繰り返すことで状況判断とタイミングが身につきます。

滑落を止める最初の動作

滑落が始まったらまず慌てず、ピッケルを地面に向けて差し込む準備をします。体を横向きにし、ピックを雪面に深く刺してから上体を後ろに引いてブレーキをかけます。この一連の動作が最初の重要な止め方です。

刺す位置は身体の肩から肘の延長線上に来るあたりが安定します。刺したら腕を伸ばして重心を後ろに移し、足で姿勢を保ちながら摩擦で速度を落とします。深く刺すために片手で強く押し込むようにすると効果が高まります。

止まらない場合は刃を縦にしてエッジを効かせるか、体を雪に密着させて摩擦を増やすとよいです。事前に反復練習をしておくことで、緊急時にも落ち着いて動けます。

携行と取り扱いの注意点

携行時はピックを後方に向け、ストラップやリーシュでシャフトを固定します。登山道やテント場で他人に当たらないよう、先端を下にして持ち歩くのが基本です。夜間や視界不良時は先端保護やカバーの使用を検討してください。

扱うときはピックやシャフトの損傷を定期的にチェックしましょう。欠けやひび割れがあれば使用を控え、専門店で点検を受けるのが安全です。装着している金具やテープ類も摩耗しやすいので、出発前に確認してください。

また、他人と行動するときは携行方法を事前に共有し、停車中は地面に置く場所を確保して誤って踏まれないように配慮します。安全意識を持って扱うことで事故を減らせます。

ピッケルの種類と部位を正しく知る

ピッケルはヘッド、シャフト、グリップ、ピックなどいくつかの部位で構成され、それぞれに役割があります。用途や技術に合った種類を選ぶために、部位ごとの特徴を覚えておきましょう。

知識があれば場面に応じた使い分けがしやすくなります。重さや形状で操作感が変わるため、購入前に触って確かめることをおすすめします。ここから各部位の名称と機能を説明します。

ヘッドの名称とそれぞれの役割

ヘッドはピックとアジツチ(平らな反対側)で構成されます。ピックは雪や氷に刺すための刃で、形状により刺さりやすさや引き抜きやすさが異なります。アジツチ側は突きや登降の際に踏ん張るための支持点になります。

ピックの角度や曲がり具合で効率が変わるため、用途に合った形状を選ぶことが大切です。鋭いピックは硬い氷に有利ですが、柔らかい雪面では過度に刺さりすぎることがあります。アジツチは雪を叩いて整地したり、クイックな支点を作るときに使います。

ヘッドには補強や交換可能なパーツが付くこともあるため、消耗部品の交換可否も確認しておくと長く使えます。

シャフト形状の違いとメリット

シャフトはストレート型とベント(曲がり)型の大きく二つに分かれます。ストレートは扱いやすく汎用性が高い一方、ベントは握りやすくアックスワークがしやすい利点があります。用途や好みによって選び分けましょう。

ストレートはシンプルな力の伝達が得られ、ラッセルや足場作りで安定します。ベントシャフトはヘッドとシャフトの角度が自然で、刺し込み時に手首や腕への負担が減るため長時間の使用で疲れにくいです。

それぞれに重さや剛性の違いがあるため、登る技術や行動の長さを考慮して選ぶとよいでしょう。

ベントシャフトとストレートの特徴

ベントシャフトは頭側が斜めに曲がっており、刺す角度が自然になります。これにより腕のローテーションが少なくすみ、アックスワークが楽になる点が特徴です。特に垂直に近い登りで扱いやすく感じられます。

一方ストレートシャフトは単純構造で多目的に使えます。斜面でのラッセルや歩行中の携行がしやすく、雪上での足場作りでも使い勝手が良いです。耐久性や修理のしやすさも考えられているモデルが多くあります。

用途に合わせて選ぶときは、自分がよく行く山域や行動スタイルを基準に判断してください。

長さを選ぶときの目安

ピッケルの長さは身長と使い方で決めます。歩行時の補助中心なら立った状態でシャフト先端が地面に接したとき手首あたりに来る長さが目安です。クライミング主体ならやや短めが扱いやすくなります。

具体的には身長160〜170cmなら50〜55cm、170〜180cmなら55〜60cm前後が一般的な目安です。ただし用途や好みで前後するため、試し持ちしてフィーリングを確認してください。着脱や荷役のしやすさも考慮すると選びやすくなります。

素材別の重さと耐久性

一般的な素材はアルミ合金とスチール、最近はチタンや複合素材もあります。アルミは軽くて疲れにくい反面、硬い氷や衝撃には弱く凹みやすい特徴があります。スチールは重めですが耐久性が高く、ヘッド部分に使われることが多いです。

高級素材は軽さと強度を両立しますが価格が高くなります。行動の頻度や荷物の軽量化の優先度を基準に選ぶとよいでしょう。どの素材でも定期点検を欠かさないことが長持ちの秘訣です。

場面に合わせたピッケルの選び方

ピッケルは行動内容に合わせて選ぶと安全に使えます。縦走や荷物を持っての長時間行動、垂直に近いクライミングなど、用途別に適した形状や長さが異なります。自分の行動パターンを意識して選びましょう。

選ぶ際は実際に握ってみて操作感を確認することが重要です。専門店で相談したり、レンタルで試してから購入するのがおすすめです。

縦走用とクライミング用の違い

縦走用は軽量で長さがあり、歩行の補助やラッセル作業に向いています。シャフトはストレート寄りで取り回しがよく、耐久性と軽さのバランスが重視されます。一方クライミング用は短めで剛性が高く、ピックの形状が鋭く氷に刺しやすい設計です。

クライミング用はベントシャフトや短い長さで動きを最小限にするための工夫があり、垂直近いルートでの操作性が良いのが特徴です。自分が主にどちらを行うかで選ぶと失敗が少なくなります。

初心者が選ぶときの優先点

まずは操作しやすさと扱いやすさを優先してください。汎用性の高いストレート型で適切な長さ、そして耐久性のある素材が無難です。リーシュやグリップの有無も使い勝手に影響しますので確認しておきましょう。

重さを気にしすぎず、まずは安心して扱えるモデルから始めるのがよいと思います。レンタルで試してから購入する方法も有効です。

身長に合わせた長さの決め方

前述の目安に従い、自分の身長と用途を合わせて長さを決めてください。歩行中心なら長め、技術的な登攀が多ければ短めが適します。試し持ちで手首の位置と肩の力感を確認することが大切です。

長さが合っていると取り回しやすく、疲労も減ります。可能なら装備と服装を着た状態で試すと実感に近くなります。

バンドやリーシュの選び方

バンドはピッケルを固定して持ち歩くためのもの、リーシュは落とさないための紐です。リーシュは可動域を邪魔しない長さで、必要に応じて外せるタイプが便利です。バンドはしっかり固定できるものを選ぶと安心です。

使い分けとしては、クライミング時にリーシュを外すケースが多いので取り外しが簡単な構造が便利です。バンドは携行時の安定性を優先して選んでください。

価格帯で見る選び方の目安

安価なモデルは入門用として十分ですが、耐久性や交換部品の有無を確認してください。中位モデルは性能と価格のバランスが良く、長く使いやすい選択肢です。高級モデルは軽量で高剛性ですが価格が高くなります。

行動頻度と用途に応じてコストを配分すると満足度が上がります。まずは使用感を優先してから価格を検討するとよいでしょう。

山で役立つピッケルの基本操作

実際の山行では持ち歩き方や刺し方、滑落時の一連の動きが重要になります。ここでは基本的な操作を分かりやすく説明します。短時間で身につけられる動作を中心に紹介します。

繰り返し練習することで操作が自然になり、緊急時にも落ち着いて動けるようになります。

持ち歩き方と腕への巻き方

持ち歩くときはピックを後ろに向け、シャフトを肩や腕に沿わせて固定します。シャフトを腕に巻くときはリーシュやバンドでしっかり留め、先端が他人や自分に当たらないように注意します。

腕への巻き方は短時間で外せるよう工夫しましょう。長時間歩行するときは片手で軽く持ち、必要時に素早く持ち替えられる位置にしておくと便利です。周囲の人との距離にも気を配って携行してください。

登りで刺すときの体の向き

登りではピッケルのピックを上方に向けて斜面に差し込み、体は斜面に対してやや横向きに保ちます。刺したときには腕を伸ばして体重を預け、足でしっかりと段差を作りながら上がります。

刺す角度は雪質や斜度で調整します。柔らかい雪面では深めに、硬い氷やクラストでは角度を浅くして安定させると良いです。体の重心を常に下に保つことで安定した登攀ができます。

下りで支えにする握り方

下降時はピックを前向きにしてシャフトを体に近づけ、下方を支えるように握ります。手はシャフト下端近くを握るとコントロールしやすく、片手で支えながら反対手でバランスを取ります。

下降中に体が前に倒れそうになったら早めにピックを深く刺し、体を後方に引いて速度を抑えます。踏み込みの幅を小さくして安定性を保つことも重要です。

滑落が発生したときの一連の動き

滑落したらまずピッケルを前向きにして地面に向けます。次に体を横向きにし、ピックを深く刺して腕で支持しながら体を雪面に密着させて摩擦で速度を落とします。この動作を素早く行うことが重要です。

刺した後は足で姿勢を整え、必要に応じて刃を縦にしてエッジを効かせます。止まったら周囲の安全を確認し、傷の有無や仲間の安否を確認してください。慌てず冷静に対処することが大切です。

雪面でのラッセルと簡易足場の作り方

ラッセルではピッケルを使って雪を切り崩し、足元を固めながら前進します。シャフトを支点にして踏み込む場所を作り、斜面の安定した層を見つけて足場を整えます。小さな段差や切り込みを作ると安全に歩けます。

簡易足場はピッケルで雪を押し固め、アジツチやシャフトの先端を使って段差を形成します。これにより滑りにくい踏み場ができ、トラバースや短い立ち止まりが楽になります。無理に大きな足場を作らず、こまめに調整するのがポイントです。

安全にピッケルを使うために覚えておきたいこと

安全に使うためには日頃の点検と正しい携行、そして周囲への配慮が欠かせません。道具の状態を把握し、基本動作を繰り返して身につけることが事故を防ぎます。

使用前後にはヘッドやシャフトの損傷、リーシュやバンドの摩耗を確認しましょう。行動中は無理をせず、疲れや体調不良を感じたら休憩を取り判断を見直してください。周囲の仲間とも情報を共有し、安全第一で行動してください。

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この記事を書いた人

アウトドア施設の調査やレジャー紹介を専門に活動しています。パラグライダーやボルダリング、フォレストチャレンジは体力よりも好奇心があれば楽しめます。自然とふれあうことで心も体もリフレッシュできる、そんな体験のヒントをお届けします。

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